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2006/03/21

『16歳の合衆国』非青春もの感想。

(原題:『The United States of Leland』)(2003)


16歳の少年(ていうか青年)が、ガールフレンドの弟で
知的障害の少年を刺殺したことから表面化する、
二つの家族の静かな悲劇、ってところですか。


別に悪くはないんだけど、なんか中途半端。

最初、静かなリーランドのモノローグから始まって、
Pixiesの、ベースの効いた"Gigantic"のイントロが流れ始めたあたりでは
正直期待したんですが。

若者の空虚さとかだるさをその反対のエッジとテンションで
描く、音楽効果のうまいいわゆる青春もの、というか。
主人公のぼんやり感から『ドニー・ダーコ』とか、
あのへんの感覚でいくのかと思ったんですが。違いました。

その冒頭"Gigantic"がボリューム上げるべきところで
下げられ、いきなり肩透かし感。
監督は音楽好きではないのね?って感じのハズれ方。


で、だんだんわかってきたんですが、もともと作品がちがう、
全然そういう話じゃないらしく、音楽はフィーチャーされませんでした。
Pixies多用なのに、一向に緊張感高まらないし
悲しくならない、っていう。

ていうか全然若者向けじゃない映画でした。
(自分が若者だと言いたいわけじゃない)
若者主人公にしてるけど、別に若者話らしくないし。
そういう若者の痛々しさとかの話じゃないし。
(なので邦題も失敗)

ドン・チードルと、若者達二組の両親の話だった。

なんか、お父様お母様と一緒に見ることが推奨されるような、
ほんと、無難なつくりで。
(子どもと一緒に、ではなく、逆なあたりがまた狙いの中途半端さ…)


悲しみと無感動、って描く話で、なにしろ監督が
人は無為にして世界は無意味、だなんて全然思ってないですよね。
単に問題を提起したかっただけっていうか。

世界は無意味だ、ってさんざん破壊的に描いといて、
でもどこかに価値がある、ってふうにやってくれると
わたしみたいな常からの無気力人間の心にも響くんですけど、
この話はなんていうか、ケヴィン・スペイシーやドン・チードルの
フィーチャー具合からもわかるように、
世界にはちゃんと意味があって、普段はあまり意識せずに
漠然と悲しみ感じながら普通の生活をきちんとしてる人が、
ほんとうは周囲に溢れている悲しみやら
善と悪なんかについて新たに考えるための話、みたいな。

でも別になんら新しい問題提起されてないし…。
世界は悲しみに満ちているから、無関心でいるしかない、
って言われても、ねえ。

原題もいまいちぴんとこない。
現代アメリカの抱える問題、というにはあんまり
コンテンポラリーな空気をもっていないというか、
もっと時代とか場所を越えて寓話的だし、
「リーランドの世界」って意味にしてはそんなに
独自性あるワールド繰り広げられてなかったけど、
「人生は断片の総和より大きい」ってセリフの断片を
Statesとして捉えたリーランドの世界とか?ってずっと気になる。

全体の、テーマ大きく構えられすぎた感が、
なんかしっくりこなかった理由かも。
もっとミニマルに詰めてくれたらよかったのに。


ラスト、
リーランドがガールフレンドのベッキーに乞われたときには
言ったって何にもよくならない、と言い渋ったセリフを
彼女の"悲しい"弟ライアンに、心からの同情を込めて
Everything's okay. Everything's gonna be okay.
と言ってやるところは、ベタだけどリーランドの意識されない
ほんとうの優しさ、善が表されていて、
意図された内容のわりにはびっくりするほど
心動かされない映画だったんですが、
このラストシーンだけは、ちょっとふつうに感動した。


で、ライアン・ゴズリングは、クリスチャン・ベールと似てる…。

顔立ちもまあ、そうなんですが、
それより"痛い演技"ってやつのアウトプットの仕方が一緒。
眉寄せて上目になって、っていう。
口をきゅっと閉じたときの口周りの筋肉の不安定な動きとか。
気になるったらない。

ゴズリングがぼんやり口開けてたらほんと、おんなじですよ。
きちんと閉じてたんで、インテリジェントなリーランドだっただけで。


そのリーランドの父を演じてたケヴィン・スペイシーが
リーランドと同じ演技をしてたのはすごかった。

ほんとうまいですね、ケヴィン・スペイシー。
パールと話してるときの表情、指の動きなんかが
あ、リーランド、って何気なくオーバーラップするような
絶妙な小演技。
このあたりは確かに見る価値。

というか、役者は確かにみんなよかったです。
話としてもそれなりによかった。
ただ、意図のわりに衝撃度というか悲劇度というか、
そういうのが低かったのが肩透かし感でした。

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