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2006/02/11

『抹殺者』不思議宗教もの感想。

(原題:『The Body』)(2001)
マット・グティエレス神父:アントニオ・バンデラス
シャノン・ゴールバン博士:オリヴィア・ウィリアムズ
ウォルター・ウィンステッド神父:ジェイソン・フレミング
ラヴェール神父:デレク・ジャコビ

基本『○○者』というタイトルの映画は見ないことにしてます。
見てどんな話だったとしても文句は言いません。
だっておもしろいはずがないじゃん!

と決心して見た『抹殺者』。
決心どおり、おもしろくなかった!とキレたりはしませんが、
さすがに黙ってるわけにも…。

元陸軍諜報部員の神父バンデラスによるトレジャー・ハントものだか
アドベンチャーものだか?って思ったら、宗教ものでした。

エルサレムで発掘中の墓所から発見された人骨が
キリストの遺骸かどうかを調査するよう
バチカンから依頼された元スペイン陸軍諜報部員の神父、
ユダヤ人女性の考古学者ととも調査を進めるが、
エルサレムにおけるパレスチナ人、ユダヤ人さらにキリスト教会の
入り乱れる宗教的対立、政治的思惑などに巻き込まれ、
いろいろ大変、みたいな話。

ええ、アクションなんてありゃしない。
トレジャー・ハントもので期待される
お約束のようなラブシーンも、主人公が神父なので
なかったり。肩透かし感抜群。

ほんと格闘一切ないんですよ! 元諜報部員だって意味も一切ない。
別に神父なら誰だってできる聖書の話をしたりするだけ。
…おかしいな。いくら宗教に主眼おいたにしても、
この意味のない設定はやっぱり変な映画だな。

(小ネタバレ)
一番意味不明なのが、パレスチナ人テロリストだかなんだかの
アブ・ユセフっておっさんが、骨を引き渡せ、って言って
ゴールバン博士の子ども二人を誘拐して人質にとるんですが、
ええと。骨はいつでも出入り自由な感じの墓にありますよね。
そのせいで真っ昼間から襲いに来たユダヤ人にツボを盗まれ、
夜の間にはパレスチナ人にランプを盗まれ、してたんじゃないんですか。
見張りはついてたりついてなかったりの杜撰さだし。
銃持ってスクールバスの中から子どもたち誘拐してくるくらいの
労力払えるんなら、あっさり盗めたと思いますよ、その人骨…。
ユセフ氏の計画というものがよくわかりません。

さらに揉みあった挙句、脅しで協力させてた同じパレスチナ人の
おっさんを撃ってしまった部下に対し、ユセフ氏はショックの顔。
「何てことを」って呻く。殺す気ないのに銃で脅しつけてたいい人?
…この人たちバカなんですか?


で、キリストの遺骨発見によってなにがそんなに
問題なのかと思ったら、キリスト復活の否定となることが問題なんですね。
教会を、ひいては世界を揺るがす大事件になると。

このへんが不思議なんですよね。
天動説が覆され、人間は猿から進化した今、
キリストが復活しなかったくらいで
なにをそんなにびっくりするのかと。
天動説はプトレマイオスの論だからいいのかな。
復活だけは譲れないのかな。
聖書は事実ではなく精神論であると
折り合いつけることはできないんですか。

やっぱり宗教の中核は救いにあるってことですか。
キリストの復活がなければその後の再臨も最後の審判もなく、
永遠の命だとか救いだとかがなくなると。
天地創造、始まりがウソだと目を瞑れても、
救いのある終わりがなくなるのは耐えられないってことですか。

ていうかアメリカの学校ではいまだにダーウィン進化論を
否定してるって親たちの訴えをこの前やってましたね…。
そうか、まだみんな1800年代半ばに生きてるんですか。
もしかして天動説も信じてるんですかね…。

いやそもそも、こんな状況証拠ばかりで、
どこにも骨=イエスだって確証なさそうなのに、
みんなよくそんなにパニクるな、と。

(ネタバレ)
男性、死亡当時30代半ば、元大工、
頭に金属以外の尖ったものをぐるっと巻いたことのある、
脇腹を槍で突かれたことのある、磔にされたことのある、
そのわりにいい墓に入れてもらったという、たんなる紀元頃の死体ですよ。

こんな証拠じゃ腕のいい弁護士にかかったら即なんの意味もないと
一蹴されませんか。イエスの特徴ではあるが、
イエス以外の者を否定するなんの材料にもなりゃしない、と。

(オチバレ)
ラヴェール神父、死ぬほどの材料どこにもなかったと思いますよ!
で、結局違うんじゃないですか。
でもこの遺体の親はすごいですね。
イエスに見立てるために息子を刺したり磔たり。
今なら死体損壊とかで怒られるんじゃないかな。

で、抹殺者って、なに?と思ったら、イエス遺骸疑いの
骨を闇に葬ろう、って話だったわけですね。
うーん不明瞭。

まあ、エルサレムの宗教的、民族的な混乱と危うさを
ちょっと垣間見れたって点で参考になる映画ではありました。


あとこの話、字幕が非常にわかりにくい。
普通字幕って、直訳したら話の流れがわかりにくくなるようなところは
意訳したりなんだりして、スムーズにされてるものじゃないですか。
翻訳者が一回内容を噛み砕いてから
セリフにない補足入れちゃったりして自分でつくり直す、みたいに。

どうもこの字幕は翻訳家も意味消化しないまま
セリフつくってるんじゃ…って疑いが拭えない。
もともと宗教ネタだからわかりにくいし
意訳しにくいってのは当然あるんでしょうけど。
でもそれ以外の軽口でも、なんの意味なのか判然としないこと多い。
このへんは訳者には意味がわかってるんだけれども、
それを見る観客には理解できないことをわかってないっていうか。

たとえばバチカンに帰ろうとするグティエレス神父、
「復活祭のウサギにお別れを(言い忘れた)
I forgot to say goodbye to the easter bunny」
と言って途中車を降り、道端で待ってたウィンステッドに
さらにジョーク言いながら近づき、新たな情報を得ますが、
この“イースターのウサギちゃん”とはなにか、
わたし日本人だから知りゃしませんよ。

どうやら復活祭の朝にイースター・エッグとかその他もろもろの
お菓子が入ったバスケットをよい子の枕元に置いといてくれる
サンタクロース的荷運びウサギちゃんらしいですが、
それ直訳されても。

意味としては、調べて欲しいと頼んでた情報を
ウィンステッドが持ってきてくれたみたいだ、ってことなんですよね?
わかんないって。
グティエレスのまじめな神学の話も、博士とか
ウィンステッドと交わす軽口も、こういう感じで全体にわかりにくく、
大変苦労しました。岡田さん頼みますよ。
戸田流大技意訳もこの際アリなのかな、とかちょっと思いました。


そして、ジェイソン・フレミングの無駄感に虚脱。

いつもそうですが、アイツの無駄な表情づくりって
なんなんですか。画面のはじで要らん小演技を見せ、
無駄に見るものの集中力を削ぐ。

ジェイソンよりカメラが悪いとは思います。
シーンの終わりをジェイソン・フレミングの顔で締めすぎ。
一体なんの伏線を狙ってんのかと思ったら。

…なんの伏線でもないんですね。じゃあアイツなんの
要員なんだ。ってラスト近くまで思ってたんですけど、
ああマスコット! なんか急に納得。

スティーヴ・ブシェミ的ポジション。
ブシェミみたいに話に溶け込んでないため
なんの要員なんだか、見るものを悩ませるんですが。
話の緊張感を緩ませるための添え物だったわけですね。

うーん、無駄。あの中途半端感。使い途のなさ。
ジェイソン・フレミング大好きだ。

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