« 『ヒッチャー』素敵殺人鬼感想。 | トップページ | 雑然と映画絡み。 »

2005/12/03

『アナザー・カントリー』思い込み感想。

(原題:『Another Country』)1984年・英
監督:マレク・カニエフスカ
原作・脚本:ジュリアン・ミッチェル
撮影: ピーター・ビジウ
ガイ・ベネット:ルパート・エヴェレット
トミー・ジャッド:コリン・ファース

1930年代の名門パブリック・スクールにおいて、青年ガイ・ベネットが
同性愛の性向と自負心の失敗から、ソ連のスパイになるきっかけの話。
(コリン・ファース主演舞台の映画化。でも主役スウィッチ。)

この映画はコリン・ファースです。だってそのために見たんです。
若い、パブリック・スクールのタイつき制服のコリンファースが拝めるわけです。

そしてほんとうに若い、コリン・ファース24歳! 登場シーンから存在感あります。
コートヤードに四角く並んだ生徒たちが合唱する様子を、流しながら撮っていきますが、
その中のひとりの青年は口を閉じたまま歌おうともせず、
ちらりとカメラの方に視線を上げます。
カメラは速度を変えずさっさと通り過ぎるんですが、
強情そうな、傲慢そうな様子が目立つ。ええ、これがコリンです。
かっこいいです。ほんとこの人、基本ハンサムです。
舞台版ではコリン・ファースが主役のガイ・ベネット役だったということですが、
映画化にあたっては“美形”を主役に、となったんでしょうか。
確かにコリンは美形ではない。でもハンサムです。
顔に力あります。いい演技します。
とかいってこの映画でなにがよかったって、シャツ姿のコリン・ファースをたくさん拝めたことです。ほんと、シャツの似合う男です! 
ベストシャーティストなんてものがあったら差し上げます。
袖まくりした腕が美しいと言って差し支えないほどのバランスです。
太さといい長さといい、完璧なんじゃないかというかっこよさ。
さらにハイウエストのズボンやらサスペンダーやら細身のタイやらベストやら、
素敵なアイテムが満載でした。

役柄としては、生来のコミュニスト、夜は隠れて『資本論』を読み、
昼は常に悪質なブルジョワジーと階級根性を批判、
パブリック・スクールの存在そのものが特権階級的なもので出来てると辛辣ですが、
じゃあなんで学校にいるんでしょうね。親の命令でしょうか。
で、彼はたぶんベネットの共産主義への導入役なんでしょうが、
いかんせんベネットは最後までさほど共産主義に興味なさそうに見えるので、
まあ特権階級批判のための要員だったと思えばいいんでしょうかね。
(それと恋に無軌道になりそうなベネットの諌め役?
彼はどこまでも冷静なストレートの人のようです。)
思想を持つ者の傲岸さを覗かせながら、辛辣な物言いをするジャッドにはほんとうに
うっとりさせていただきました。もはやときめきません。
あまりにimpressiveで呆然。あの口調にやられます。
「利口ぶるつもりか」「ぶるんじゃない、利口なんだ」とシラッと言ってみせる
ジャッドのキャラもかなり好きです。

ルパート・エベレットはどうも、あのそげたような輪郭が一向に無視できず
気になってしょうがないので、美形扱いなのは認めるとしてもやっぱり苦手です。
軽薄で無分別な甘い顔の青年らしさはよくでていたと思います。
これを演じるコリン・ファースを見てみたかった。
コリン・ファースも結構軽薄な役が似合うと思いますが、
もっと凄みがでてしまったんじゃないでしょうか。
ちょっと狂気じみた軽薄さの似合う人です。

で、本編についてですが、わたしが見たあらすじにはなんとなく間違いが多いようです。
嘘とまではいかないんですが、焦点がずれてるのかなんなのか、
かなり違った映画像もたされてました。いやまあ、単なるわたしの思い込みかも。

ベネットは少しも気の毒な感じのしない、軽はずみで結構根性の卑劣な男でした。
同性愛者であるための社会からの疎外と、それがもとで共産主義に傾く過程を
もっと丁寧に描いた社会派要素のある映画かと思ったら、
パブリック・スクールの実体とその中でのロマンスでしたか。
共産主義のスパイなんて、学生時代を振り返る導入でしかありませんでした。
見終わった感想は割とばかばかしい。
自分の名誉欲が満たされなかったことに対して子どもの癇癪のように誓った復讐を
実行に移し、スパイにまでなる根性は大したものですが。

あとはなんとなく勝手に、主人公の青年がストレートと同性愛の間を
純情に悩みながら行ったりきたりして、ようやく男の方に傾いたら
周りに初恋踏みにじられちゃうような話だと思ってました。ええ何を根拠に。
(ネタバレ要素反転)
ベネットが脅し文句に「おまえらがそんなことしたら舎監のところに行って、
ここ3年間僕と関係のあったやつの名前全部バラしてやる」って言ったのに驚愕。
その目の前にいる学生2人が卑怯だぞ、って慌てたのに愕然。
おまえらみんなか!

全然純情だとかの話じゃなかったようです。(本人は初恋だと主張してたが)
それをクライマックスも近くなってから気づくとは。
違う話見てたんじゃん。
でもそうです、初めて自分の性状に戸惑ってる男が下級生(子ども)の前で
「彼の喉元の窪みに蜜を垂らして舐めとりたい」、なんて言うものか!
(だからもっと早くに気づけって自分。思い込みって怖いですね)

それとですね、ホモセクシュアルであることを咎められる、っていうからてっきり
もっと秘密めいてるのかと思ったら、結構常識的にまかりとおってるようです。
「寮の風紀が乱れてる」「清潔な寮などあるものか」って会話とか、
ベネットが義父を指して「学生はみんな赤かオカマだと思ってる」
(ピンクかレッドって。うまいこと言う)とか、ふつうなんですね。
英国の悪しき風習ってやつですか。
ベネットが初めて恋をした、自分が同性愛者だと認める、とか言ってたことから、
問題は“真性”ってことのようです。学生の頃の火遊び程度で
大人になってやめれば大した問題じゃなさそうです。
すごいなパブリック・スクール。

あとは、この映画で困ったのは名門校における“代表”“幹事”などの役職の
重大さ、名誉加減がよくわからないため、なにをみんなそんなムキになっているのか
いまいちわからないことと、若い男どもの見分けがほとんどつかない。
ベネット、ジャッドともうひとり、ハゲ気味の変な顔のバークリーという人間だけは
わかりましたが、あとはどれもこれも同じに見え、
ベネットの思い人のハーコートでさえどれだかわからない始末。
どれだけ話を理解していたか、怪しいものです自分。
(でも冒頭にでてきた学生時代の写真のシーンを見直して、
その中にハーコートの写真があったと気づきました。
そんなに好きだったか…ほんとに純情だったのか…)

なんか全体にずっと、びっくりしてました。
思い込みの所産でしょうか。

でもまあこの映画、コリン・ファースを見るためなら万全だと言えます。
頭の中が潤いました。

|

« 『ヒッチャー』素敵殺人鬼感想。 | トップページ | 雑然と映画絡み。 »

コメント

私もだいぶ昔ですが、アナ・カン観ました。
確かにコリン・ファースが若いなぁ。
一人だけ、ベスト着て袖を折ったシャツ姿なんですよね~。
アノ頃は、エベレットとコリンの絡みが見たかった!!

当時、友人達との間でコリン派とエベレット派に分かれていました。
私はエベレット派だったのですが、いかんせん時が経つとともにお顔がフランケン化していくので残念でなりません。

私の青春の映画でした。

投稿: taro | 2005/12/06 18:42

代表のみなさんが“色ベスト”なる正気を疑う柄物シルクベストを着、
ベネットもそれに憧れる中でのジャッドの孤高のニットベストは
わたしの心の拠りどころでした。
でもエベレット派とコリン派があったことにはびっくりです。
あの映画でもいるんですね、コリン派! 
一般的にみなさんエベレット派だと思ってました。美形ですものね。
甘いハンサム系は年を取るのが大変だと、最近のエベレット氏を見て思います。
コメントありがとうございました!

投稿: kishi | 2005/12/07 01:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104865/7444934

この記事へのトラックバック一覧です: 『アナザー・カントリー』思い込み感想。:

« 『ヒッチャー』素敵殺人鬼感想。 | トップページ | 雑然と映画絡み。 »