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2005/12/11

『ダメージ』組体操感想。

(原題:『Damage』)1992年
監督:ルイ・マル
スティーヴン・フレミング:ジェレミー・アイアンズ
アンナ・バートン:ジュリエット・ビノシュ
イングリッド・フレミング:ミランダ・リチャードソン
マーティン・フレミング:ルパート・グレイヴス
ピーター・ウェズラー:ピーター・ストーメア(何気なく)
刑事:デヴィッド・シューリス(何気なさ過ぎ)

卒ない人生の議員が息子の婚約者と情熱的な恋に落ちる…っていうスジじゃ
なにも表せない凄まじさ。

あの、もう、スゴすぎて、疲労しました。
ちょっとあり得ないくらいの、なにこれ、この映画。
なにやってんのルイ・マル!

そもそもジュリエット・ビノシュがだめなんだった。
ジェレミー・アイアンズでも到底相殺できやしません。
(ていうかこの映画ジェレミーも相当すごい)
ビノシュとかソフィー・マルソーとか、
ああいう豪の者風の女というか、計算高い女だめです。
ていうか、カマキリ…?

怖いし。ふたりが出遭った瞬間から、気をつけて! 食われる!
って怯えっぱなし。ええスティーヴンそっちのけで、わたしが。
びびりまくってました。
まったく魅力的じゃないのになぜか自信に満ち溢れた
誘惑の視線を送ってくるところとか。そしてあっという間にデキる。
…もうちょっと、駆け引きとかないの? いきなり?

笑えるんですけどね。怖すぎて。
涙目で「こんな気持ち、どうしたらいいのかわからないんだ」と言って
「こんなの初めてなのね」とアンナにちょっと優しい顔されるスティーヴン。
笑えすぎ。どうかしてる、この映画。
ラブシーンでなぜあんたが悲鳴をあげる、スティーヴン!みたいな。
ルイ・マルの意図したものもあやしいですが、
それ以上に翻弄するビノシュと翻弄されるアイアンズが悪い意味ではまり過ぎて
違う映画になってしまった気がする。ほんとならもっと情感というか、
情欲に溺れる男と女ふうになってよかったんじゃないですか。

そう。あの、エロティシズムってどこに。
ああエロスなんて幻想でしたよね。そんなのロマンですよ。
実際こんなもんですよ、体操競技ですよ。
肉体の競演ですよ。
笑っちゃうんですけど。ほんと。
全裸でどったんばったんやってるのが、組体操か、っていう。
腕を広げたまま床に倒れこむアンナ。カカシか。
あのビノシュの叙情のなさはなんなんですか。スカート捲くられて見える脚も
全裸のときの脚も、丸太のように動くんですけど。超唯物的。

ああ、なにか足りないと思ったら! 胸毛だ。
あれだけ裸で転げまわってるんで、確かに毛ダルマだとうっとうしいですが。
でもジェレミーに毛がない上、ビノシュに柔らかい肉付き(おもに胸)だとか
なかったんで、もう絡む手足のどっちがどっちだか、
それこそ組体操になってしまってたわけです。淫靡さゼロ。
わざとなんですか? エロス排除の試みですか?
ていうかボディ・ダブルとかなしなんですか?
ボディ・ダブルであのふたりの情感のなさを再現できるとも思えませんが。
(むしろ再現しなくていい)

(オチバレ)
息子がお定まりに濡れ場に踏み込む、って、可哀想過ぎです。
普通のとこならともかく、あんな!体操中の父親の尻なんか見たら自殺しちゃいます。
ショックのあまりよろめいたマーティン、
これまたお定まりに廊下から吹き抜の床まで落ちます。ま、死にます。
素っ裸でボカシ入れながら階段駆け下りる父スティーヴン。
内装工事作業員の横を走り抜けるところで、外聞なく息子の身を
案じる様子にちょっと感動。したんです、が。
マーティンの血が顔につくのも構わず抱き起こして泣くスティーヴン。
倒れた若い男を抱きしめて嘆く素っ裸の中年。
どんなホモの愁嘆場だ。
周りに群がった工事の人たちはすごいびびったと思います。
誰も親子だなんて知らないし!
その後スティーヴンは息子抱えたまま毛布かけられてました。
誰かとっても優しい人がいたんだね…。


キャスト全般にミステリー感漂いますが、ジェレミー・アイアンズが
若いのはいいんじゃないですか。ハンサムでしたよね。
あんな年の息子がいそうには到底見えなかったです。
あと全然話聞いてなかったくせに、調子合わせにぎこちなく笑うところの
気持ち悪い笑顔とか。ジェレミー節全開で。
ほかもアンナの十代からのボーイフレンド、ピーター・ストーメアといい
最後マーティン死んだあと出てくる刑事デヴィッド・シューリスといい、
変に気を取られるキャスティングしてます。
物陰から覗くようにしてわずかのシーンで消えるシューリスは不思議だ。

妻イングリッドのミランダ・リチャードソンは結構よかったです。
最後の方もよかった。
こんなばかばかしいことで息子を亡くして憤懣やるかたない母の嘆きがいいです。
「そういう関係になったとき何故自殺しなかったの」と言うイングリッド。
「嘘をつき通せるとでも思ったの、あなたは悪人じゃないのに」という
涙ながらの冷酷な賢妻ゼリフが感動的です。
隠し通せるほど要領よくも人間が悪くもないんだから、自殺すればよかったのに、
死んでくれてたらこんなことにならずに済んだ、あなたを思って過ごせた、
っていうセリフはすごいと思います。
裏切りとか息子を死に追いやったことをただ責めて憎むだけじゃなく、
スティーヴンの性質と自分の愛情を把握した冷静かつ皮肉な非難を展開。
その分悲劇的でイングリッドに思わず涙。しそうに。
このミランダ・リチャードソンの一連の演技で、わりとラスト
話が締まったと思います。

いや締めても締まりきらない不思議がたくさんありましたけどね。

総まとめ。目的のジェレミー・アイアンズもなにも
すべて吹っ飛ばす苦笑と失笑の連続ラブシーン。エロスどこ行った。
…間違ってるんですよね? 間違ってないんだとしたら、ほんとの意味で
すごい映画だ。

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コメント

何と『ダメージ』に考察がされている・・・

自分も不自然な映画だなと思いました。でもあの演技はどこまで身体的にダメージを受けられるかJ&Jが目論んだ撮影だったとか。おかげで賠償金(ダメージ)も随分頂いたそうです。なんてトレビアに出すとガセ行きです(結構ブログから拾われているらしい。ネタ集め用のブログまである。エリザベス朝の闘熊の事をコメントしたら、早速そこいらに乗っていたのでビックリ。)ちなみにJ&Jの話は本当です。

ビノッシュさんは『青の愛』で初めて観たので印象派クール・ビューティー、理知的で冷たい感じが残っていました。『ダメージ』も。
でも実際それ以前の彼女のキャラって温かい馬鹿っぽい役が多い。

カラックス氏の作品は何か観ましたか?

炎のフォアーマンさんの『存在の・・』(この原作は映画を全く無視してかなり好き)の彼女は好きです。冴えない感じの人が国の混乱・危機に際して段々と生き生きしてくる(戦場まがいの街の様子を他所に上気し特意になってカメラを手にしている生意気な)所が。
彼女の鼻の演技は特にいいなぁ。
『イングリッシュ・・』も、最後で、一瞬すました
顔から雨が降ってきたダハァって笑うところとか、ああいう表情は他に見たことがない。

フランスの名優ランヴァート・ウィルソン(続マトリックスでハリウッドのフレンチコンプレックスをシンボル化していた)と共演した『ランデ・ヴュ』もビノッシュさんはともかく地味ながら佳作でした(とはいえカンヌで受賞とは)。ハリウッドよ、レオの『ロミオとジュリエット』と対比して観るべし。

ダメージもロリータも個人的には好きな作品ではありませんがジェレミー君が出ると興行的に退廃的作品になってしまうのが残念です(その意味で『キングダム・・』はホント良かった。いい役だった)。

投稿: あっ!ダメージが | 2005/12/16 13:38

ああ、間違ってない映画だったんですか!
狙い以上の効果が得られたスゴイ映画だったんですね。
観客の精神的ダメージも結構ありそうな…。

実のところジュリエット・ビノシュ関連、
ほとんど見たことありません。(なのに悪口雑言)
『存在の耐えられない軽さ』はとっくに見ていていいはずなんですが、
ビノシュに怯えて未見です…。
お恥ずかしいです。ちょっと根性出します。
情報満載のコメントいただいてやる気がでました。
ありがとうございます!

投稿: kishi | 2005/12/17 01:01

コメントありがとうございます。
鑑賞後、観客の金銭的ダメージが大きいと思います(邦画によくあるあの感じ。例:Re魔界転生。終わった瞬間、後ろの女性客二人がぼそり「つまらん」。全く同感。虚しさまで込み上げてくるあの感覚)。
まあ、ご両人の半端なヌードが観れただけでも良しとしましょう。

ビノッシュさんは別にファンではありませんが結局受賞後(『イングリッシュ・・』)の彼女の作品(ショコラ以外)は全く見ていません。
kishi さんの怯える理由を訊きたいところですが、「根性」出さなくてもフレンチ映画結構好きじゃないですか?ルコント氏は少年時代は好きでしたが、ラティシア・コスタ(何でMissフランス?ラックスだけでいいではないか)なんて起用した頃から見なくなりました。なんででしょう。
またお邪魔します。では。

投稿: 南方 | 2005/12/17 11:32

お金払っていると苦痛増えますね。
ビデオ代程度のダメージでよかったです。でなきゃ笑えない。

怯える理由、具体的にはないんですが、(見てないくらいだから)
あのぼけぼけしてるふりして計算高く妊娠しそうなところでしょうか…。
というか本人もあくまで無自覚に計算してそうなところが。
いやまあ顔なんでしょうね! 簡単に言うと。
あのにんまり笑う顔が怖いです。
結構好きなルコント監督作でさえビノシュ出演作は
未だ避けている根性なしなのです。
フレンチの怖い“運命の女”たちを避けて通らずにすむ
精神力を身につけたいと思います。
是非またいらしていろいろと教えてやってください。ありがとうございました。

投稿: kishi | 2005/12/18 13:31

つくずく思うのですがkishiさん十分にフレンチ気質を備えていませんか?実はそういうご自分に彼女らを通して直面するのが怖いとか・・

あれ、フェリックスと・・が。
シャルロットさんはいかがでしょう?
自分この人好きなんですけど。

しかし、したたかといえるものはさかしらともいえる。よって不平不満も人生にリンクさせ形而上的に深化させていまう彼女達ってやはり骨太だ。たくましい過ぎる。横に座っている役者すら無視している彼らの個人主義って筋金入りだ。怠惰で人間的だし。

未婚の子持ちも結構います。「できちゃった婚」ならずではなく、意識して未婚子育て選んでいる、人生の選択として、そのしたたかさ気概はkishiさんの毒づきにも相通じているような。でもその毒饅頭は的を得ているので怖い!って強引な結び。
丁寧にレスありがとうございます。お邪魔しました。
付:『ダメージ』を観たのはTV放映でした。親に隠れて録画した。確かまだ高校か中学生だったと記憶しています。その後ビデオでもしっかり見ました。

投稿: 南方 | 2005/12/19 20:48

しつこく食いついてすみません。
『フェリックスとローラ』はシャルロット・ゲンズブール、結構好きでした。
ローラの陰鬱さと作品全体のムードがよく合っていたので。
『ダメージ』はあらゆる点で一致を見ない不思議映画でした。
これがテレビ放映! どの時間帯だとしてもすごいことです。

毒々ポイントではフレンチ合格点を出せそうで嬉しいところですが、
簡単にあがってしまうテンションを抑えない限り
悲しそうだね、って人に言ってもらえるフレンチ女にはなれそうにありません。
あとミステリアス要素も足りないです。
思ったことをすぐ言っちゃうので!(悪いことも全部)
「横に座っている役者すら無視」な豪の女ふうに極めたいと思います。

投稿: kishi | 2005/12/20 21:59

「悲しそうだね、って」言われるよりテンション上がってハイ(lateral)だねって言われる方が健全じゃないですか。その方が不敵、いや素敵ですね。すいません。引っ張りすぎました。これで最後にします。敬具。

投稿: 南 | 2005/12/21 00:12

こちらこそすみません。
構ってくれる人がいるとすぐにテンションあがっちゃうもので。
どこまでも食いついてしまいます。
こんな横ッスベリにも、またお付き合いただければ幸いです。
ありがとうございました。

投稿: kishi | 2005/12/22 00:57

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