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2005/11/03

『ヴェニスの商人』本・感想

新潮文庫版。
福田恒存先生の訳が光ってます。
辛口ポーシャ、求婚者達をこきおろしてますが、その中のひとり、
酒飲みの若いドイツ人について酷いこと言ってます。
「あの人、一番いいときで、少しばかり人間以下」
ポーシャ!この子大好きだ。名訳。

ところで、本編、アントーニオーが、涙が出るほどお人好しです。
こんなお人好し、酷い目遭わされてもしかたがない。
出せといったら妻子まででも差し出しそうだ。(いないけど)
バサーニオーもこれでもか、というほどタカってます。
友達は選べ、という教訓なんですか。

いや違うな、読み返すに、これは美徳というよりマゾだ。バサーニオーに、
「安心するがいい、ぼくの財布も身柄も、ぼくに出来ることならなんでも、お望みとあれば、すべては御意のままだ。」
ってバカッ!そんなこと言ってるから胸エグられるんだ!
献身とか奉仕に命投げ出す勢いだ。

いや結局のところ潔癖です。こういう人はタチ悪いです。
君のためだったら死ぬことくらいかまわない、みたいな友情ぶりと、
高利貸しは犬呼ばわりして唾を吐きかけてもかまわないという
残酷な高潔ぶり。
君を死なせるくらいならぼくが死んだ方がマシだ的会話が裁判の場で
バサーニオー、グラシャーノー、アントーニオーの間でうっとうしく繰り広げられ、
シャイロック、これだからキリスト教徒の亭主どもは、みたいにちょっとうんざり。
つうかそんなだったら最初っからカネなんかタカるなって。
そしておまえら新妻死んでもいいみたいなこと言うなって。
その妻のために借金するなって。

ところでシャイロックの娘、ジェシカ、あんなに心の美しい娘はいない、
あのごうつくのユダヤ人の娘とは思えないほどだ、
って言われてますが、その娘、親の金で駆け落ちしてます。
わたしの自由になるお金を持ってくる、って、てっきり小遣いかなんか
持ってくるのかと思ったら、親父のところからちょろまかしたと。
しかも金二袋と宝石たくさん。あんたそれ泥棒だ。
シャイロックが結婚前に妻からもらったエメラルドの指輪もです。
しかもその指輪、譲ってもらった猿の対価に人にあげてます。猿の。
酷い。シャイロックがあそこまでキレたのは
この娘のせいじゃないんですか。
しかも最後にシャイロックから財産取り上げて、
死後譲渡として半分をこの駆け落ちカップルにくれてやろうという話に。
盗人に追い銭か!!

なんかシャイロックが気の毒になる話、という点では
別段新しい感想はないんですが、この娘夫妻がここまで
勝ち組な話だったとは。おそろしい。
みんないやにシャイロックに悲劇の皮かぶせたがるがこれは
シェイクスピア喜劇だろ、っていう意見には基本賛成ですが、
ほかの連中別段酷い目遭ってないからシャイロック同情票は仕方ないです。
(アントーニオーは自分の友情と犠牲に酔っているので同情の余地なし。楽しそうだ)
そんな中シャイロックだけ。アントーニオーとかバサーニオーとの揉め事は
仕方ないにしても、なんだって自分の娘にこんな目に。
妻からもらった指輪は大事にしてる冷血漢シャイロックの
人らしい心すら踏みにじる娘の人非人振り。なんつー大団円!

映画版でも娘ジェシカにこんな目に遭わされんのかと思うと…。同情。
そういえばポーシャ男装も本当にやるのか。
映画では喜劇というよりシリアスドラマなんですよね?
裁判風景だけなら日本で最も上演されてきたシェイクスピア劇
というのもわかる。ここだけなら機転と人間ドラマに富む悲劇だ。
でも今回は全編初映画化ということで、この茶番風味台本が
どう調整されているのか! 来週見てきます!

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コメント

レスコメントありがとうございます。TB2つ送ってしまいました。1つは消してください(2つ消すのはナシ)。
記載のセリフ、今でこそ”名台詞”なんて言われますが製作当時は観客みんなして笑ったのでしょう。彼のその境遇&ひがみ根性を、当時の日常パロディーとして。だから喜劇。しかし小気味良いご「感想」でここおもしろいです。また来ます、お邪魔します。

投稿: 南方 | 2005/11/05 12:16

ついでながら(失礼)お「猿の」にトラバック。
アイアンズさんの最新記事もあとでゆっくり読ませていただきます(タイトルだけに反応してコメント落としただけでしたので)。敬具

投稿: 南方 | 2005/11/05 16:01

TBありがとうございます。
猿ですね、こんな猿との指輪交換だったら、シャイロック堪りませんね!

山場のセリフはやっぱり喜劇として演じて欲しいものです。
痛烈な皮肉と憎悪に満ちた巧妙なセリフまわしが
現代でも紙一重の笑いを誘いそうです。
コメントありがとうございました。こちらからもまたお邪魔させていただきます。

投稿: kishi | 2005/11/05 23:08

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